RPGツクールと数学のブログ

RPGツクールと数学についてのブログです。

Σk(k+1)…(k+m-1)

過去ブログの転載です。

総和の公式の中にこんなものがあります。

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k(k+1)\cdots (k+m-1)=\frac{1}{m+1} n(n+1)\cdots(n+m)

例えば、 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k(k+1)(k+2)=\frac{1}{4} n(n+1)(n+2)(n+3)となります。

この公式を知らないと、左辺を展開してそれぞれの総和の公式に当てはめて、まとめて最後に因数分解……とかしないと右辺にならないので、結構面倒です。

でもなんだかこの公式、きれいじゃないですか?

総和の公式で累乗の和を求めるものがありますが、基本的にどうも複雑な形をしたものが多く感じられますよね。
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2} n(n+1)
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{2} = \frac{1}{6} n(n+1)(2n+1)
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{3} = \frac{1}{4} n^{2} (n+1)^{2}

など、なんだか統一性がないように見えます。

一般のm次の場合の公式が実はあるのですが、とてつもなく煩雑です↓
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{m} = \frac{n}{m+1} \sum_{i=0}^{n} {}_{m+1}C_{i} B_{i} n^{m-i}
こんなんわけがわかりませんよね。この式の詳細は以下です:

有理数の総和公式 - RPGツクールと数学のブログ

それに比べて冒頭の式は実にきれいです。nの一次式が一個掛かって、その次数の逆数が係数として掛けられている、なんだかまるでこれみたいですよね↓

 \displaystyle \int x^{m} dx=\frac{1}{m+1} x^{m+1}+C

実際、冒頭の公式こそが真の累乗の和の式じゃないでしょうか。つまり、Σk^2とかΣk^3とかの方がズレていて、成るべくして煩雑になってしまったと思うわけです。詳細は以下です:

ポッホハマー記号を使おう! - RPGツクールと数学のブログ

差分和分について

本記事の目的は、冒頭の式を導出することです。まずは準備段階として、差分和分についてさらっと説明します。差分和分とは、微分積分の数列バージョンとでも言いますか、非常に類似した考え方です。

差分和分 - RPGツクールと数学のブログ

【差分】
 \displaystyle b_{n}=\Delta a_{n} = a_{n+1}-a_{n}

不定和分】
 \displaystyle \sum b_{n}=a_{n}+C Cは和分定数)

【定和分】
 \displaystyle \sum_{n=\alpha}^{\beta} b_{n}=a_{\beta+1}-a_{\alpha}

これによれば、数Bで扱う総和を求める問題は、すべて定和分を計算する問題と等価なことになります。

微分積分で、積分公式は微分公式から導くことができるように、
差分和分では差分公式から和分公式、すなわち総和の公式を与えることができます。

例えば、
 \Delta 1=1-1=0
 \Delta n=(n+1)-n=1
 \Delta n^{2} = (n+1)^{2}-n^{2}=(n^{2}+2n+1)-n^{2}=2n+1
などという差分公式から、それをひっくり返して
 1=\sum 0より、 \sum 0=1+Cとなって、定数は Cにまとめて \sum 0 = C
 n=\sum 1より、 \sum 1=n+C
 n^{2}=\sum(2n+1)=2\sum n + \sum 1=2\sum n + n + Cとなるから、
 \displaystyle n=\frac{1}{2} (n^{2}-n)+C=\frac{1}{2} n(n-1)+Cになる、といった具合で和分公式を与えていくことができます。

【差分公式】
 \displaystyle \Delta 1 = 0
 \displaystyle \Delta n = 1
 \displaystyle \Delta n^{2} = 2n+1

【和分公式】
 \displaystyle \sum 0 = C
 \displaystyle \sum 1 = n+C
 \displaystyle \sum n = \frac{1}{2} n(n-1)+C

不定和分を使えば、定和分、すなわち数列の何から何までの和、というのを求められます。

例えば \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2} n(n+1)ですが、これを求めるには和分公式の「 \displaystyle n = \frac{1}{2} n (n-1) + C」を使います。
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k
 \displaystyle =a_{n+1}-a{1}
 \displaystyle =\left\{ \frac{1}{2} (n+1)(n+1-1)+C \right\} - \left\{ \frac{1}{2} \cdot 1 \cdot (1-1)+C \right\}
 \displaystyle =\left\{ \frac{1}{2} n(n+1)+C \right \} - (0+C)
 \displaystyle =\frac{1}{2} n(n+1)
といった具合ですね。定積分と同じで、定数 Cは消えます。

差分和分で証明する

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k(k+1)\cdots (k+m-1)=\frac{1}{m+1} n(n+1)\cdots (n+m) を、差分和分を使って示します。別にこれじゃなきゃいけないってことはないですけれど、差分和分を使うととても自然に示せます。

ここで、 k(k+1) \cdots (k+m-1)というのが扱いづらいので、次のような記号を使って表わします。

 \displaystyle k^{[m]}=k(k+1)\cdots (k+m-1)

例えば、 \displaystyle 3^{[4]}=3\times 4\times 5\times 6=360といった具合です。累乗の上がっていくバージョンですね。階乗の仲間かな? なんとなく、離散における累乗はこれの方が自然な気もしてきます。

この記号を使えば、さっきの公式は次のように表わせます。

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{[m]}=\frac{1}{m+1} n^{[m+1]}

なんだかより定積分の公式に近くなりましたね。これを示すことにしましょう。

まずは \displaystyle n^{[m]}の差分を求めます。
 \displaystyle \Delta n^{[m]}
 \displaystyle =(n+1)^{[m]}-n^{[m]}
 \displaystyle =(n+1)(n+2)\cdots(n+m)-n(n+1)\cdots(n+m-1)
とすると、 n (n+m)以外は共通因数なので、
 \displaystyle =(n+1)(n+2)\cdots(n+m-1)\{(n+m)-n\}
 \displaystyle =m(n+1)(n+2)\cdots(n+m-1)
 \displaystyle =m(n+1)^{[m-1]}
となることから、
 \displaystyle \Delta n^{[m]}=m(n+1)^{[m-1]}
という差分公式が作れます。なんとか乗の微分に似てますね。 n n+1に置き換わる所に注意です。

では、これをひっくり返して和分公式を作りましょう。ただひっくり返すだけです。
 \displaystyle \sum m(n+1)^{[m-1]}=n^{[m]}+C

これを変形していきます。両辺 mで割って、

 \displaystyle \sum (n+1)^{[m-1]}=\frac{1}{m} n^{[m]}+C

 n+1 nに置き換えてやれば、

 \displaystyle n^{[m-1]}=\frac{1}{m} (n-1)^{[m]}+C

さらに、 m-1 mに置き換えてやると、

 \displaystyle n^{[m]}=\frac{1}{m+1} (n-1)^{[m+1]}+C

となりますね。あら、ほとんど出来たようなものですね。

あとは定和分を使って公式の形にします。

 \displaystyle \sum_{n=1}^{n}n^{[m]}
 \displaystyle = \left\{ \frac{1}{m+1} (n+1-1)^{[m+1]}+C \right\} - \left\{ \frac{1}{m+1} (1-1)^{[m+1]}+C \right\}
 \displaystyle \left \{ \frac{1}{m+1} n^{[m+1]}+C\right \} - \left \{ 0 + C \right \}
 \displaystyle =\frac{1}{m+1} n^{[m+1]}
となって、導くことができました。

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{[m]}=\frac{1}{m+1} n^{[m+1]}

もとい、

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k(k+1)\cdots(k+m-1)=\frac{1}{m+1} n(n+1)\cdots (n+m)

を示すことができたことになります。

ね、なんだか知らないけど、すっきりするでしょう?(多分、差分和分使わない場合も似たようなことして求めるんだと思います^^;)