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ポッホハマー記号を使おう!

過去ブログの転載です

いつからこれが累乗の和の式だと錯覚していた?

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2}n(n+1)
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{2} = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{3} = \frac{1}{4}n^{2}(n+1)^{2}
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{4} = \frac{1}{30}n(n+1)(2n+1)(3n^{2}+3n-1)
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{5} = \frac{1}{12}n^{2}(n+1)^{2}(2n^{2}+2n-1)

累乗の和の公式は、とても複雑です。指数が大きくなると、まるで違う式になってしまいますよね。

一方で、累乗の積分の公式はいたってシンプルです。

 \displaystyle \int_{0}^{n} x dx = \frac{1}{2}n^{2}
 \displaystyle \int_{0}^{n} x^{2} dx = \frac{1}{3}n^{3}
 \displaystyle \int_{0}^{n} x^{3} dx = \frac{1}{4}n^{4}
 \displaystyle \int_{0}^{n} x^{4} dx = \frac{1}{5}n^{5}
 \displaystyle \int_{0}^{n} x^{5} dx = \frac{1}{6}n^{6}

これらはまとめて次の一本の式で表すことができます。

 \displaystyle \int_{0}^{n} x^m dx = \frac{1}{m+1}n^{m+1}

何だか積分の方が難しそうなのに、どうして累乗の和の公式はシグマの方が難しいんでしょう。

それは、累乗の計算がシグマにとっては自然ではないからと思われます。

積分とシグマの違いって連続か離散かの違いなのですよね。連続とは 1 2の間に 1.5があって、 1 1.5の間に 1.25があって、……というのを無限に繰り返せる、隙間のない数のことで、離散とは 1の次は 2 2の次は 3、というように、間には何もないとびとびの値をとる数のことを言います。

連続の場合は面積が考えられます。

f:id:fermiumbay13:20180215213301p:plain

短辺 aの直角二等辺三角形を二つくっつけたら、一辺 aの正方形になりますね。すると、正方形の面積は a^{2}として得られます。

ところが離散の場合はこうなります。

f:id:fermiumbay13:20180215213409p:plain

タイルを三角状に並べて一辺 a個ずつ並ぶようにし、それを二つくっつけてみると、タイルの個数は a^{2}じゃなくて、 a(a+1)個になります。1つ分ずれちゃうんですね! 連続の場合はこのずれが無限に小さいために、ずれない、と考えることができます。

上のような例から、もしかしたら離散にとって累乗は a^{2}じゃなくて a(a+1)の方が自然なんじゃないかと思うことができます。 3乗の場合はどうなるかというと、 a(a+1)(a+2) ですね。離散の場合は掛ける数を1個ずつ増やしていくのが自然と言えましょう。

これらを昇冪と呼んで、昇冪を表わす記号にポッホハマー記号があります。

ポッホハマー記号

ポッホハマー記号の表記は決まってないそうなのですが、一般的な表記はどうも混同しやすいものだったり、PCで表記しづらいものだったりするので、ここでは次の記号をポッホハマー記号とします。
 n^{[m]}=\overbrace{n(n+1)(n+2)\cdots(n+m-1)}^{m}

例えば 2^{[3]}=2 \times 3 \times 4=24となります。これならテキストでも表記しやすいですね。テキストで書くと2^[3]=2×3×4=24のようになるでしょう。

これがシグマにおける真の累乗であるなら、色々と革新的なことが起こります。ポッホハマー記号を使った和の公式はこうなります。

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{[m]}=\frac{1}{m+1} n^{[m+1]}

詳細はこちら:Σk(k+1)…(k+m−1) ( その他自然科学 ) - 風の迷路 - Yahoo!ブログ

累乗の積分の公式と非常に似ているというか、累乗の部分差し替えれば一緒ですね! なるほど、ずれていたから今までの累乗の和の公式は煩雑だったのか。

次の積分を求めていたようなものです。

 \displaystyle \int_{0}^{n} x(x+1)(x+2)(x+3)dx = \frac{1}{30} n^{2} (6n^{3}+45n^{2}+110n+90)

積分だと逆にポッホハマー記号の累乗の方が煩雑になってしまいます。お互いに合った累乗の公式を用意してあげるべきだったということでしょう。

これなら、もうあの複雑な累乗の和の公式を使う必要はありませんね。これからはぜひ、ポッホハマー記号を使いましょう。ポッホハマー記号万歳です。

ポッホハマー記号を使った累乗の呼び方を考えましょう。累乗の場合は指数部の後に「~乗」と言いますね。 2^{3}だったら2の3乗。ポッホハマー記号も累乗みたいなものですから、何か語尾に付けたいものです。ここでは「~ハマ」と呼びましょう。 2^{[3]}2の3ハマです。囲碁のアゲハマみたいな感じで呼ぶのがコツです。

累ハマの拡張

さてこの累乗ならぬ累ハマをきちんと定義して、色々と性質を導いておきましょう。累乗を実数に拡張できるように、ポッホハマー記号も以下のようにして拡張可能です。

 \displaystyle n^{[m]}=\frac{\Gamma(n+m)}{\Gamma(n)}

ガンマ関数で定義してやれば、実数どころか複素数に拡張可能です。この定義は、昇冪が順列を用いて表せることに基づいており、順列が階乗を用いて表せることに基づきます:

 \displaystyle n^{[m]}=_{n+m-1}{\rm P}_{m}=\frac{(n+m-1)!}{(n-1)!}

階乗をガンマ関数で表せば上の定義の式が得られます。

非整数ハマの例として、例えば
 \displaystyle 2^{\left[\frac{1}{2}\right]}=\frac{\Gamma(2+\frac{1}{2})}{\Gamma(2)}=\frac{3\sqrt{\pi}}{4}(\fallingdotseq 1.329)
があります。

ポッホハマー記号の性質のうち、指数法則に似たものがこちらです:

 \displaystyle n^{[0]}=1
 \displaystyle n^{[-a]}=\frac{1}{(n-a)^{[a]}}
 \displaystyle n^{[a+b]}=n^{[a]}(n+a)^{[b]}
 \displaystyle n^{[a-b]}=\frac{n^{[a]}}{(n+a-b)^{[b]}}

指数法則に似てるけど、ちょっとずれるというのが特徴ですね。

累乗と累ハマとの相互変換にはスターリング数を用いるのが便利です。ここでは割愛しますが、一方を展開したときに現れる係数を表す数です。(片側変換の例:累乗の総和の考え方 ( その他自然科学 ) - 風の迷路 - Yahoo!ブログ

累ハマの和の公式から累乗の和の公式を作る

最後に、ポッホハマー記号を使って冒頭の複雑な累乗の和の公式をいくつか作ってみましょう。

1乗の公式はほとんど自明ですね。

1乗の和の公式

 \displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^{[1]}=\frac{1}{2}n^{[2]}
 \displaystyle k=k^{[1]}より
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n^{[2]}=\frac{1}{2}n(n+1)

次に、2乗の公式を作ってみます。

2乗の和の公式

 \displaystyle k^{[2]}=k(k+1)=k^{2}+k=k^{2}+k^{[1]}より
 \displaystyle k^{2}=k^{[2]}-k^{[1]}となるので、
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^{2}=\sum_{k=1}^{n}k^{[2]}-\sum_{k=1}^{n}k^{[1]}
累ハマの公式から
 \displaystyle =\frac{1}{3}n^{[3]}-\frac{1}{2}n^{[2]}
 \displaystyle =\frac{1}{6}(2n^{[3]}-3n^{[2]})
累ハマの指数法則から
 \displaystyle n^{[3]}=n^{[2+1]}=n^{[2]}(n+2)^{[1]}となるので、
 \displaystyle =\frac{1}{6}n^{[2]}(2(n+2)^{[1]}-3)
 \displaystyle =\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)

こうやってさっき提示した指数法則っぽい式を活用すると、多少すっきり求めることができますたぶん。

同様にして、3乗の公式も作ります。

3乗の和の公式

 \displaystyle k^{[3]}=k(k+1)(k+2)=k^{3}+3k^{2}+2k
 \displaystyle k^{2}=k^{[2]}-k^{[1]}を代入すると \displaystyle k^{3}=k^{[3]}-3k^{[2]}+k^{[1]}が得られるので、
 \displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^{3}=\sum_{k=1}^{n}k^{[3]}-3\sum_{k=1}^{n}k^{[2]}+\sum_{k=1}^{n}k^{[1]}
 \displaystyle =\frac{1}{4}n^{[4]}-n^{[3]}+\frac{1}{2}n^{[2]}
 \displaystyle =\frac{1}{4}(n^{[4]}-4n^{[3]}+2n^{[2]})
累ハマの指数法則を用いて
 \displaystyle =\frac{1}{4} n^{[ 2] } ( (n+2)^{[2]}-4(n+2)^{[1]}+2)
 \displaystyle =\frac{1}{4} n^{[ 2] } ( (n+2)( (n+3)-4)+2)
 \displaystyle =\frac{1}{4} n^{[ 2] } ( (n+2)(n-1)+2)
 \displaystyle =\frac{1}{4} n^{[ 2] } (n^{2}+n)
 \displaystyle =\frac{1}{4}\left(n^{[2]}\right)^{2}
 \displaystyle =\frac{1}{4}n^{2}(n+1)^{2}

だんだん作業になってきましたね。これが m乗になった場合、最初の段階である累乗を累ハマに置き換える部分がややこしくなるので、複雑な公式になってしまう、ということになります。

ぜんぶ累ハマにしちゃえばいいってことですよ。普段から意識してハマにしましょう^^;*1

*1:はま寿司好きでいっとき毎週行ってました