整数解の個数
過去ブログの転載です。
今回は整数解の個数に関する以下の証明をしてみます。
実数があるとき、次の範囲を満たす整数の個数をそれぞれ与える。
個
個
個
個
ただし、はそれぞれ床関数、天井関数。(それぞれ正の数に対する切り捨て、切り上げに相当)
例えばを満たすはの3個、を満たすはの2個です。
それぞれ式に当てはめてみると、
個
個
となって、確かに合っていることが確認できます。
終端から始端を引き算しているだけですから、ちょっと操作してみたら割と当たり前なように感じるのですが、細かく証明してみたいと思います。
解の個数について
そもそも解の個数はどのようなものであるか確認しておきます。
例えば は の2個の解を持ちます。これは、に対してとなるようなの集合の要素数として表現することが可能です。
集合 としたときのが解の個数に相当するというわけです。
この場合の解の個数とは、零点集合の要素数と言い換えられますね。
同様にして、集合と置いたときのが、の範囲内にある整数の個数、と言うことが出来ます。
従って、冒頭の4つの関係は次のように表現出来ます。
これらを証明しましょう。
整数間の範囲に修正する
次の式がそれぞれ成り立ちます。
左辺は実数間の範囲ですが、右辺は整数間の範囲になっています。まず、これらを示します。
全部やるのはめんどくさいので、の場合のみ確認します。
これらを示す際に、床関数と天井関数の性質を用います。これらは定義式から直ちに導かれます。
(1)を満たすの個数は、を満たすの個数に一致する
を二つの範囲に分割します。 と です。
を満たすが存在しないことを示せばOKです。
全辺を引けば
となり、床関数の性質からなので、
となります。
は整数ですが、これを満たす整数は存在しません。よって、題意が示されました。
(2)を満たすの個数は、を満たすの個数に一致する
同様にすればよいです。 と に分割し、
とすると天井関数の性質からなので、
となりますが、これを満たす整数はないので、題意が示されます。
残りも同様に導くことが可能なはずです。
整数間の範囲の解の個数を求める
次に、整数による整数間の範囲の解の個数を求めます。これは次のようになります。
これを示せれば、もう導けたも同然です。
簡単のため、次のように範囲を変形します。
の全辺からを引いて
とすると、, は整数なので、それぞれと置けば
となります。
となります。
もうここまできたら、さすがに明らかですね。
を数学的帰納法で示しましょう。
のとき になりますが、のみ満たすので
となります。
のときと仮定すると
のとき
の全辺を引けば
より、とおくととなります。
これを満たす整数はしかないので、
が言えることから、
となります。
以上より、数学的帰納法からが示されました。
から、 より
が言えて、 とすれば
左辺はに等しいので、
を導くことができました。
ほかの式も同様に求められます。
すごいまどろっこしいですけど、これでちゃんと示せましたね。たぶん……
R-Z存在定理
実数定数未知数整数があるとき、が常に解を持つことは、と同値である。
これに対して私はR-Z存在定理という臭い名前をつけました。今回きちんと求めた解の個数の式を使えば、これは簡単に示せます。
上の定理はより一般に、次のように言うことができます。
実数定数未知数整数があるとき、の解の個数の下限は個である。
であればなので、確かに常に解をもつことが言えます。これを示しましょう。
まず、の解の個数は です。
これが以上であることを言えればいいので、
が非負になることを示せばOKです。
となります。
① が整数のとき
より、に無関係に成立
② が整数のとき
より、成立
③ が非整数だが、が整数のとき
(は整数)とおくと、と表されるので
より、成立
④ もも非整数
が成り立つので、③の値よりも大きくなることが確認できるから、成立
以上からすべての場合で成り立つので、常に非負です。
よって、解の個数の下限は であると言えます。
が何か分からなくても、の値だけで解の下限が分かるのですね。