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輪 ~ 始めようゼロ除算

過去ブログの転載です

ゼロ除算は禁じられています。小中学校で習いましたね。{ \displaystyle 0 \div 3}はできても、{ \displaystyle 3 \div 0}出来ません。{ \displaystyle 0 \div 0}ダメです。

{ \displaystyle 0}で割ることを許してしまうと、例えばこんなことが起きてしまいます。

{ \displaystyle 3 \div 0 = x}とすると、両辺{ \displaystyle 0}倍することで{ \displaystyle 3 \div 0 \times 0 = 0x}になり、左辺は約分して{ \displaystyle 3}になり、右辺は{ \displaystyle 0x=0}より{ \displaystyle 0}になります。よって、{ \displaystyle 3=0}です。これはおかしな結果ですね。こんなことが起こるので、{ \displaystyle 0}で割ってはいけないことにしてあるのです。

{ \displaystyle 0}で割ることをゼロ除算と呼び、やっちゃダメだよ、という認識が強まっていると思います。{ \displaystyle \frac{3}{0}}なんて分数を見ただけで、うわぁ……と思いますよね。でもホントに{ \displaystyle \frac{3}{0}}は存在しないで片づけていいんでしょうか。

一方で、{ \displaystyle \sqrt{-1}}存在しません。ルートの中にマイナスを入れるのは禁止です。ところが、これを存在すると仮定して、それを{ \displaystyle i}と決めるとどうでしょう。{ \displaystyle \sqrt{-1}=i}となることにより、{ \displaystyle \sqrt{-4}=2i}とか言うことができます。虚数ですね。

虚数だって、元々答えが無かったものに答えを与えたものですから、実数だけで考えていたときには成り立っていた色々な法則が破綻します。

{ \displaystyle \sqrt{ab}=\sqrt{a}\sqrt{b}}が代表例ですね。実数なら、

{ \displaystyle 6=\sqrt{36}=\sqrt{4 \times 9}=\sqrt{4}\sqrt{9}=2\times 3=6}

とすることができますが、ルートの中にマイナスを入れてしまうと

{ \displaystyle 6=\sqrt{36}=\sqrt{(-4)\times(-9)}=\sqrt{-4}\sqrt{-9}=2i\times3i=-6}

というおかしな結果になります。虚数を認めると{ \displaystyle \sqrt{ab}=\sqrt{a}\sqrt{b}}が成り立たないのです。

しかし、たとえそういったいくつかの破綻があっても、虚数は便利なので色んな場面で使われています。

そう考えるとどうでしょう。別に0で割ってもいいんじゃね??と思いませんか。

{ \displaystyle 0}で割ることを認めれば、{ \displaystyle 3\div0=x}の答えを与えることができます。その代わり、例えば{ \displaystyle \frac{0}{0}}を約分して{ \displaystyle 1}にするとか、{ \displaystyle 0x=0}にするとか、そういったことが成り立たなくなります。いくらなんでも{ \displaystyle 3=0}を認めるわけにはいかないですからね。他の法則を書き換えてやれば、{ \displaystyle 0}で割ることだって一応可能です。

何でやらないんでしょう?

簡単に言えば、書き変わる法則が多すぎる割に大して役立たないからだと思います。{ \displaystyle 0x=0}が成り立たないなんて、ありえなくないですか。

実際に一応ゼロ除算を認めてみた体系というのがあります。輪(りん)という代数系です。輪の理論はWheel theoryと呼ばれています。そのまんまや。

足し算・引き算・掛け算だけが出来る代数系のことを環と言いますが、それに似たものです。足し算・引き算・掛け算・割り算・ゼロ除算を可能とした奇跡の代数系です。

輪の定義は次の通りです。

まず、輪で使われる数の集合を{ \displaystyle {\rm W}}とします。正の数に限定しても、実数全体や複素数を使っても、どうでもいいです。

この{ \displaystyle {\rm W}}の各々の数の間には「足し算」「掛け算」分配法則を除いて完璧に定義されているとします。結合法則も成り立つし、交換法則も成り立ち、{ \displaystyle 0}を足し引きしても、{ \displaystyle 1}を掛けても変わらない、というものです。

ここで、割り算を次のように定義します。

{ \displaystyle a \div b = a \times \frac{1}{b}}

「bの逆数」と掛け算するのです。これも普通ですね。

その上で、次のルールをすべて満たす代数系と呼びます。

{ \displaystyle \forall x, y, z \in {\rm W}}
{ \displaystyle (1)\quad\frac{1}{xy}=\frac{1}{x}\frac{1}{y}}
{ \displaystyle (2)\quad\frac{1}{\frac{1}{x}}=x}

{ \displaystyle (3)\quad xz+yz=(x+y)z+0z}
{ \displaystyle (4)\quad \frac{x+yz}{y}=\frac{x}{y}+z+0y}
{ \displaystyle (5)\quad 0\cdot0=0}
{ \displaystyle (6)\quad (x+0y)z=xz+0y}
{ \displaystyle (7)\quad \frac{1}{x+0y}=\frac{1}{x}+0y}
{ \displaystyle (8)\quad \frac{0}{0}+x=\frac{0}{0}}
{ \displaystyle (9)\quad a \in {\rm W} \quad{\rm s.t.}\quad 1+a=0 \rightarrow -x \equiv ax, x-y \equiv x+(-y)}

(9)は、{ \displaystyle {\rm W}}にマイナスの値が入っているなら引き算を定義出来るよ、という意味です。

輪は一般に{ \displaystyle 0x=0}が成り立ちません。上のルールだと{ \displaystyle 0y}とか{ \displaystyle 0z}とか残ってますものね。

{ \displaystyle x,y,z}{ \displaystyle 0}を除く普通の実数だとすれば、もちろん{ \displaystyle 0x=0}も成り立つし、上の法則がすべて成り立つのは明らかでしょう。

{ \displaystyle 0x=0}が成り立たないのは、例えば{ \displaystyle x=\frac{1}{0}}みたいな数です。ここでは{ \displaystyle \frac{1}{0}}などというものも数だよ、と認めているのです。これが、輪がゼロ除算を認めていると言われる理由です。

実際一般に次の性質が現れます。

{ \displaystyle 0x \neq 0}

{ \displaystyle x-x \neq 0}

{ \displaystyle \frac{x}{x} \neq 1}

引き算、割り算の結果が必ずしも単位元に戻らないことに注意です。ではどうなるのか、というと次のようになります。

{ \displaystyle (a)\quad 0x+0y=0xy}
{ \displaystyle (b)\quad x-x=0x^{2}}
{ \displaystyle (c)\quad \frac{x}{x}=1+0\frac{x}{x}}

これらの法則は、定義(1)~(9)から導くことの出来る定理です。それぞれの証明は以下の通りです。

{ \displaystyle (a)\quad 0x+0y=0xy}
{ \displaystyle 0x+0y=(0+0y)x} … (6)より
{ \displaystyle =0yx} … { \displaystyle 0}単位元だから足すと消える
{ \displaystyle =0xy} … 積は交換則が成り立つ

{ \displaystyle (b)\quad x-x=0x^{2}}
{ \displaystyle x-x=1x+(-1)x} … (9)より
{ \displaystyle =(1+(-1))x+0x} … (3)より
{ \displaystyle =0x+0x} … { \displaystyle 1+(-1)=0}
{ \displaystyle =(0+0x)x} … (6)より
{ \displaystyle =0x^{2}}

{ \displaystyle (c)\quad \frac{x}{x}=1+0\frac{x}{x}}
{ \displaystyle \frac{x}{x}=\frac{0+1x}{x}}
{ \displaystyle =\frac{0}{x}+1+0x} … (4)より
{ \displaystyle =1+\left(\frac{0}{x}+0x\right)}
{ \displaystyle =1+\left(\frac{0}{x}+0+0x\right)}
{ \displaystyle =1+\frac{0+0x}{x}} … (4)より
{ \displaystyle =1+0\frac{x}{x}}

ということで、

{ \displaystyle x-x}の結果は{ \displaystyle 0}ではなく、{ \displaystyle 0x^{2}}

{ \displaystyle \frac{x}{x}}の結果は{ \displaystyle 1}ではなく、{ \displaystyle 1+0\frac{x}{x}}になるのですね。

もちろん{ \displaystyle x}{ \displaystyle 0}以外の普通の実数なら当然それぞれ{ \displaystyle 0,1}になりますが、{ \displaystyle x=\frac{1}{0}}とかならそうはならないぞ、ということになります。

{ \displaystyle \frac{1}{0}}は普通の数に入ってないので、{ \displaystyle \sqrt{-1}=i}と決めたように、{ \displaystyle \frac{1}{0}=}♪とか決めてみましょう。{ \displaystyle \sqrt{-4}}{ \displaystyle 2i}と表わせますが、{ \displaystyle \frac{2}{0}}を♪を使って表わせるでしょうか?

なんと、{ \displaystyle \frac{2}{0}=}♪になります。実は分子が非{ \displaystyle 0}実数ならいつも♪になるのです。

{ \displaystyle a,b}{ \displaystyle 0}以外の実数とし、{ \displaystyle a \neq b}とします。
{ \displaystyle \frac{a}{0}}
{ \displaystyle =a \cdot \frac{1}{0}}
{ \displaystyle =a \cdot \frac{1}{\frac{a}{b}\cdot 0}}
{ \displaystyle =a \cdot \frac{1}{\frac{a}{b}}\cdot \frac{1}{0}}
{ \displaystyle =a \cdot \frac{b}{a} \cdot \frac{1}{0}}
{ \displaystyle =b \cdot \frac{1}{0}}
{ \displaystyle =\frac{b}{0}}
となるので、{ \displaystyle \frac{a}{0}=\frac{b}{0}}になります。

上記{ \displaystyle 0}以外の任意の分子の場合で成り立つので、全部同じなのです。よって、{ \displaystyle \frac{a}{0}=\frac{b}{0}=}♪になります。

また、♪は何乗しても♪のままです。


{ \displaystyle =\frac{1}{0}}
{ \displaystyle =\frac{1}{0\cdot 0}}
{ \displaystyle =\frac{1}{0}\cdot \frac{1}{0}}
{ \displaystyle =}{ \displaystyle ^{2}}

より、♪{ \displaystyle =}{ \displaystyle ^2}が成り立ちます。{ \displaystyle \frac{1}{0^{2}}}も♪なのですね。

でも{ \displaystyle \frac{0}{0}}は♪ではありません。{ \displaystyle \frac{0}{0} \neq \frac{1}{0}}です。

{ \displaystyle \frac{1}{\frac{1}{0}}=0}ですが、
{ \displaystyle \frac{1}{\frac{0}{0}}}
{ \displaystyle =\frac{1}{0 \cdot \frac{1}{0}}}
{ \displaystyle =\frac{1}{0} \cdot \frac{1}{\frac{1}{0}}}
{ \displaystyle =\frac{1}{0} \cdot 0}
{ \displaystyle =\frac{0}{0}}

となり、{ \displaystyle \frac{0}{0} \neq 0}なので、逆数が一致しないのです。{ \displaystyle \frac{0}{0}=}☆とでも決めておくと良いでしょう。

☆と♪は非常によく似た性質を持ちます。

{ \displaystyle -}{ \displaystyle =}
{ \displaystyle -}{ \displaystyle =}
{ \displaystyle +1=}
{ \displaystyle +1=}
{ \displaystyle =k}♪({ \displaystyle k}{ \displaystyle 0}以外の実数や虚数
{ \displaystyle =0}
{ \displaystyle =}☆♪
{ \displaystyle ^2=}
{ \displaystyle ^2=}

気付かれたかもわかりませんが、♪は「不能」を、☆は「不定」をそれぞれ数として表わすことに成功したものなのです。{ \displaystyle \frac{1}{0}}の結果は不能ですが、不能の結果は何乗しても不能のままだし、不定の結果は何乗しても不定のままです。

不能+不能は不能ですが、
不能-不能は不定になります。

こういったものを扱うには便利ですね。