できない積分
過去ブログの転載です。
積分の問題を色々解いてみましょう。積分??なにそれ!な状態だと、本記事の内容はたぶん何一つわかりません……
∫xsinxdx
コレは、できるよね??
部分積分すれば解けますね。こうなります。
∫xcosxdx
ができるならもできるでしょう。同じように部分積分で解けます。
部分積分の練習問題としては定番でしょう。
∫xtanxdx
ももできたので、次はです。どうでしょうか。部分積分して見る? 同様にを微分側にするとなるとが積分側になるわけだけど、の積分って何だっけ??
今度はの積分です。アレなんか最初のの積分より難しくなってますね……とでもおいてみる?になるから……
さあどうしよう……?? の微分はという簡単な形になるので、試しにまた部分積分してみる?
はいもうムリっすね
実はこのという積分は、見た感じすげえ出来そうなのに、実は絶対に求められない、できない積分なのです。歯がゆいですね。
このような、どうやってもできない積分は実は身近にあふれています。そういうのは当然、試験の問題には出ないので、意図せずしてできない積分に遭遇してしまうと、なんか出来そうなのに確かにできねえ!という不思議な気持ちになると思います。
知るかよ!おれは意地でも解いてみせるぜ!
野心的な皆さま、お疲れさまです。
理系の一部の界隈でご用達のサイトにWolfram Alphaというのがありますが、このサイトに計算式を入れると、なんと大体なんでも計算してくれます。このサイトにを入力してみましょう↓
https://www.wolframalpha.com/input/?i=integral+x+tan+x+dx
なんか答え出てきてますよね。虚数とか指数関数とか、果てはなんていうわけのわからない記号まで出てきています。
そうです、実はこの積分、まったくできないとは言いすぎで、新しい記号を導入すればできないことはないんですよ。というか、それはすべての不定積分に共通します。
ここでいうできない積分とは、初等関数を積分して初等関数にならないものを指します。高校数学までの範囲で出てくる関数は例外除いて全部初等関数というグループのものなので、それで表せないから解けない、としているだけです。初等関数以外を認めちゃうなら、それこそ「この積分結果をこういう関数で表す」みたいなことをしてしまえばまあ全部解けちゃいますからね^^;
についても同様で、初等関数以外の新しい関数を導入すれば解くこと(表すこと)ができるのです。これは多重対数関数という特殊関数で、次式で表されます:
のときは、となって、普通の対数関数になります。対数関数のレベルアップ版だからこんな名前が付いてるんでしょうね。どのあたりが多重なのかよくわかんないのだけど……
ここではとしたを使います。としたこの関数は初等関数ではないので、コレが積分の答えに出てくるということは、それはできない積分です。
コレをどう使うというと、ここから一つ公式を作っておくのです。
の両辺をで割ってみると、
になってるので、これを両辺積分してみると
のように、それぞれ分母が2乗になってくれるんですよ。この右辺がまさにですから、次式のように表せることになります。
なおかつ、でしたから、
という公式が生まれます。左辺の積分も初等関数では解けない、できない積分だったということですね……
ちょっとこれを覚えておいて、上式が出てくるようにの表現を変えていきましょう。
∫xtanxdxをムリヤリ解く
まず、を複素数で表します。ですね。
分母分子にを掛けると
ここでとでも置いてみると、ですから、
となって、割とすっきりします。でもまだ積分の中にが残ってますね。
より、となりますから、これを代入すると、
積分の式実は、まあまあ単純な形になってきましたね。ここで、ログを微分側として部分積分します。すると、
となります。ここでさっき作った多重対数関数の公式が使えますね。
だったので、積分の結果は
ということになります。後はをの式に戻してやって、
となります。これが答えです。やの積分と比べると、想像もできない答えですね……答えというか、むりやり表したが正しい気もしますけど……ちゃんとWolfram Alphaの答えと同じになってるよね?